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為替相場と株式投資の関係は?円安のとき注意すべき資産運用のポイントも解説

為替相場と株式投資は資産運用にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
ニュース番組の最後で、必ず株価と為替レートの情報を伝えていますよね。それは、その数字が私たちの生活に、関わりが深いからです。
今回は、為替相場と株式投資の関係について書きたいと思います。
難しそうなタイトルですが、それを知ることで資産運用との関わりが見えてきます。
2022年11月には1ドル150円を記録し、32年以来の円安になり、2023年3月現在は1ドル130円で、相変わらず円安が続いています。
株式投資を行う際、円安のときは、円高と比べて米国株を買うには多くの円が必要になります。

 

その仕組みの解説として、下の図をご覧下さい。

1ドル100円のときは、100円で1ドルdえりんご1個を買えますが、1ドル120円の円安になれば、りんご1個が120円になり、1ドル80円の円安になればりんご1個は80円になります。

出典:毎日新聞ホームページ

為替レートの変動によって、りんご1個の値段は日本円に換算すると、円高のときは安くなり、円安のときは高くなります。

りんごを、海外の株式などの金融銘柄に置き換えると、同じ銘柄でも円高のときは安く買えて、円安のときは高く買うことになります。

投資を始めたばかりの方は、円安の今は米国への投資を控えて、円高になってから買い増していった方がいいのではないか、と思われる方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、そういった不安を解消するため、世界経済の影響を受けやすい為替相場と株式市場の関連性について書きたいと思います。

それらを理解することで、漠然とした不安がなくなり、円安の今、ご自分に最適な資産運用の方法が見えてくるはずです。

コントロール不可能な為替相場と、上下する株価の中で、どのような投資を続ければいいのかの、資産運用のポイントも解説します。

この記事で分かること

為替相場が決まる要因

為替相場と株式投資の関係

円安のときの資産運用のポイント

ドル円為替相場の現状

2022年から円安が続き、2022年11月には1990年8月以来約32年ぶりの円安を記録しました。一時円高に振れましたが、その後再び円安に振れ、2023年3月24日現在は1ドル130円で、まだまだ円安状況です。短期間で円安と円高を繰り返し、為替相場は安定していません。

為替相場はどのようにして決まるのか

年11月では1ドル150円

2023年3月では1ドル130円

その為替相場はそのようにして決まるのでしょうか。

為替相場は、通貨の需要と供給のバランスによって決まります。

通貨の需要と供給と言われてもピンとこない方もいるかと思いますが、物やサービスの価格が決まるのと同じ原理です。

例えば、中東からの石油の供給量が減ったときには、ガソリン代が高騰しますよね。逆に、野菜が豊作すぎて供給量が増えた時には、需要を供給量が上回っている状態になって1個当たりの価値が下がり、その分値段は安くなります。

欲しいと思う人が多くなれば、価値は上がり値段は高くなり、重要が少なくモノがあふれる状態であればモノの値段は安くなります。

為替相場も同様です。

ルが欲しいと思う人が増えれば、円を売ってドルを買う人が多くなり、ドルが希少となって価値が上がり、ドルの値段は上がり、円の価値は下がります。これが「円安ドル高」です。

逆に円の需要が多くなれば、ドルを売って円を買う人が増え、円の価値は上がり、円高ドル安となります。

2011年頃は1ドル80円でした。世界的に日本の価値が上がり、円が欲しい人が多かった時代ですね。

2023年現在は1ドル130円なので、2011年の1ドル80円と比べて円を欲しい人が少なくなっているということです。

現在の円安ドル高は、円よりもドルが欲しい人が増えてきた結果なのです。

では、このような通貨の需要と供給はどのような要因で変化するのかについて、見ていきましょう。

通貨の需要と供給はどのようにして決まるのか

主な要因は4つあります。

  1. 輸出入の量
  2. 投資家による米国株購入の額
  3. FX取引
  4. 為替介入

①輸出入の量

例えば、自動車メーカーがアメリカに自動車を5万ドル輸出するとします。

自動車の代金として受け取った5万ドルは、日本で円に換金して使われます。

1980年代後半から90年代初めは、輸出に強い日本企業が多かったので、米国に物を売ってドルを稼いでそのドルを売ってばんばん円に換えていました。その時代、円の価値はどんどん上がりました。

輸出が増えると、円の需要が高まり、逆に輸入が増えると、円をドルに換金して米国製品を買うので、円を売ってドルを買うことになり、ドルの需要が増えます。

このように、輸出入の量は、為替相場を動かす需給のバランスに大きく関係します。

出典:auじぶん銀行ホームページ

②投資家による米国株購入の額

現在、ネット証券の普及により、日本の個人投資家も気軽に米国株や米国債券を買うことができるようになり、2018年のNISA制度の施行によってその数は増えました。ETFを除く米国を含む外国の投資信託は、年間約8兆円買われていると言われています。

日本の投資家が米国の株式や米ドルで発行された債券(国債や社債など)に投資をする場合には、「円を売って米ドルを買う」必要があります。

つまり、日本投資するよりも外国に投資する方がいいと思う人が増えれば増えるほど、円は売られてドルが買われることになります。その結果、米ドルの需要が高まり、ドル高円安になります。

さらに、インデックス投資で長期運用すると、一度買ったドルは円に20年~30年換金されません。

このように、米国株への長期投資では、日本の個人投資家が、円を売ってドル建ての米国の株や国債が買い、しかも20年以上の長期に渡ってドルを保有します。その結果、長期に渡ってドルが買われので、長期に渡って円安ドル高となります。

一方、アメリカの投資家が日本の株式や債券に投資する場合には、逆の流れが起きます。

③FX取引

FXとは「Foreign Exchange」の略で「外国為替証拠金取引」のことをいいます。 「日本円→米ドル」など、通貨を買ったり売ったりしたときに発生する差額によって短期で利益をねらう取引です。

例えば1ドル130円のときに、1ドル150円のように円安になることを見込んで、レバレッジをかけて(元手の金額よりも2倍~数十倍の額で取引を行うこと)大量の金額のドルを買い、円安になったら大きく儲けようとすることです。

為替相場をみて、ドルが売られ過ぎで価値が下がり割安だからレバレッジをかけて買っておこう、円は買われ過ぎで割高だから売ってしまおう、というように、レートの動きを見て為替差益を狙っている人がいることを覚えておきましょう。こういった動きによっても為替相場は動きます。

④為替介入

為替レートには政府が好ましいと思う基準があります。それを大きく逸脱した数字になると政治が介入してくる場合があります。

これを政府による為替介入と言います。

政府は1ドル100円が理想としているのに、今は1ドル130円だから、国が円をたくさん買って円の価値を上げて円安を解消しよう、また、1ドル80円だから円を売って円高を解消しようというように、国がテコ入れして為替を操作します。

実際、政府・日銀は急速な円安を抑えようと2022年9月と10月にかけて24年ぶりに円買い・ドル売り介入に踏み切りました。このときの介入額は9兆1880億円。この結果、1ドル=151円から、1ドル=144円台まで円高となりました。

以上4つの要因のよって、為替相場か確定します。

国が今後いつ為替介入を実施するのかはわかりませんし、FX取引をする人がどのくらい増えるかもわかりません。

為替は読めないと言われるのは、このように個人ではコントロールできない複数の要因があるからなんです。

為替相場が動いたとき、つまり円安や円高になったとき、この4つの要因、日本の輸出入の今後の傾向や、米国株への投資額、FX取引額、為替介入があるのかないのか、のどれに当てはまるのか、自分なりに理由を分析することが重要です。この繰り返しが、金融リテラシーを上げることにつながります。

円安のときは、日本株や債券の魅力は無くなって、外国資産を買う人が増えている状態です。通貨の価値と国の実力は比例しています。このことは、国内外の株式投資をする上で、認識しておく必要があります。

為替相場と株式投資の関係

私たち日本人が米国の株式や債券に投資するとき、円をドルに換金してドルで投資することになります。

つまり、米国の株式や債券を購入するときには、必ず為替の影響を受けます。

例えば、1ドル100円のときに100ドル分のS&P500に連動した投資信託をを購入したとします。

1ドル100円の場合、100ドル=10,000円

その後、1ドル90円の円高になった場合、100ドル=9,000円

となり、為替変動により、マイナス1,000円の損失となります。

出典:伊予銀行ホームページ

上の図のように、同じ100ドル分の株価を購入していても、為替変動によって円に換金するとマイナス1,000円損してしまいます。

これを、為替リスクと言います。

このように、為替の変動は株式投資のリスクを高めます。

その解消として、為替リスクを回避するために保険をかけるを為替ヘッジをすることができます

為替ヘッジという保険料を支払う行為によって、マイナス1000円分の差損はなくなり、10,000円受け取ることができるのです。

為替ヘッジのメッリトデメリット

しかし、必ずしも為替ヘッジを取った方がいいという単純な話ではありません。

為替ヘッジを取るべきか否かは、それぞれのメリットデメリットを理解して、自分に合った選択をする必要があります。

為替ヘッジは円高による為替リスクを回避することができる一方で、そのためのコストがかり、また、円安による利益を享受できないデメリットがあります。

今後も当面円安が続くと予想し、為替差益を得たい人、為替ヘッジのコストをなくしたい人は為替ヘッジ無しの方が良いでしょう。

参考までに、以下の表を見てください。

これは、過去約5年間での為替ヘッジあり、なしの比較表ですが、円高が進んだ2018年12月以降は「ヘッジあり」のパフォーマンスが「ヘッジなし」を上回っていました。しかしその後2021年に入り、円安が進むと「ヘッジなし」の上昇率が高まり、「ヘッジあり」のパフォーマンスを上回りました。
上記期間に限れば、全体としては「為替ヘッジなし」の方が有利でしたが、株価の上げ下げの影響をもろに受けているのは、為替ヘッジなしの方です。ですので、投資期間、株価の変動が少なさから、心穏やかに過ごせるのは、ヘッジありの方です。

「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」はどちらがよいというものではありません。

株価が上がって、円高になっていても、慌てず平然としていられる人もいるでしょう。反対に、保険料を支払って、円高のリスクを無くしてメンタルが安定させたいという人もいるでしょう。

どちらを選ぶかは、個人のリスク許容度によって違ってきます。

為替ヘッジなし派

  • 為替変動の影響を受けた、変化の激しい相場を受け入れられる人
  • 投資にかかるコストは無くしたい人
  • 今後円安に進むと考えている人

為替ヘッジあり派

  • 為替変動の影響を極力減らしたい人
  • 投資対象資産の値動きのリスクのみで運用したい人
  • 今後円高に進むと思う人

円安のときにインデックス投資をして大丈夫なの?

結論は、以下の前提ならば大丈夫です。

  • 15年以上の長期投資
  • 生活防衛資金3年分あり
  • 分散された低コストのインデックスファンドへの投資

これまで述べた通り、米国などの外国株を購入するとき、株価も安くて、円高ならば最高ですね。逆に株価が高く、円安ならば高値掴みのリスクがあります。

でも、株価も為替も誰にも読めません

株価が一直線の右肩上がりならば、だらだらとインデックス投資をやっている場合ではなく、短期目線で個別株で、レバレッジをかけて集中投資がいいに決まっています。しかし、株価も為替も誰も読めないため、長期で再現性の高いインデックス投資をする人が多いのです。

長期でのインデックス投資の始め時はいつでも「今」です。すでに投資を始めている人も、これから始めようとしている人も、勝負は短期でなく、15年以上の長期でで決まります。

長期積立を推している理由は、短期で見たら株価の上げ下げがあったとしても、15年以上の長期で見れば米国の株式は右肩上がりの可能性が高いからです。

下記のグラフからもわかるように、2000年代初めのITバブル、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックを乗り越え、アメリカ経済は右肩上がりの成長を続けています。

 

円安のときも、円高のときも定額で淡々と積立て続けることが重要です。

 

アメリカ経済が右肩上がりだと予想できる理由

今後もアメリカ経済が成長していくと予想できる理由は主に3つあります。

①人口増大

米国のGDP(国内総生産)は世界トップです。その上、主要先進国の中で唯一、人口が増加しています。およそ3.3億人いる米国の人口は今なお増加を続け、2050年には3.8億人になる見込みです。人口が増えると、消費が拡大し、生産が拡大し、経済が拡大するという好循環が得られます。消費が伸びるかどうかという指標は、かなり重要です。なぜなら、個人の消費支出はGDPの7割を占める重要ファクターだからです。

②世界を代表する成長企業が多い

GAFAMだけでなく、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、コカ・コーラ(KO)、スリーエム(MMM)など、米国には世界的な大企業が多くあります。

しかも、将来への投資(研究開発・設備投資・M&Aなど)も積極的で、高い成長力を保ち続けています。また、実力主義の米国では世界中からプロ経営者が集まり、ビジネスを拡大させています。

③株式市場のスケールが大きく、お金が集まりやすい

Bloombergによると2022年10月末時点の世界の株式時価総額は93.6兆ドル。そのうち42.2兆ドル、45%を占めるのが米国です。世界中から投資マネーが集まることで米国企業が成長していきます。

また、米国株には高配当銘柄や連続増配銘柄が多く、年4回配当金を出す企業が一般的です。株主のメリットが大きいのもお金が集まりやすいポイントです。

今後、円高・株安が同時に来て、さらなる下落が来るかもしれません。しかし、そのタイミングはわからないし、下落相場から復活するまでの期間もわかりません。その一方、長期的には米国株式市場は右肩上がりになる可能性は高いと考えます。

円安時の資産運用でやってはいけないこと

円安になったとき、円の価値が下がった、と言って

すべての資産をドルに変えてしまう

この行動はやめましょう。

現在は円安のため、外貨預金や米国株に投資している方は、為替差益が出ていると思います。しかし、為替相場は、上記の4つの要因が複雑に絡み合って確定します。これから先もドル高円安が続くと予想して、全ての資産をドルに変えてしまおうか、と考える方もかもしれません。
しかし、もし予想が外れて円高に転じた場合は、逆に資産が目減りすることがあります。

何度も言います。

為替相場と株価は誰にも読めません。

どんな状況であろうとも、長期・分散・積立を淡々と続けることが大切です。

まとめ

今回は、為替相場と株式投資の関係、円安時の投資のポイントと注意点について書きました。

今回の記事の要点

  • 為替相場が決まる4つの理由
  • 為替ヘッジの必要性は人それぞれ
  • 為替相場と株価は読めない
  • 円安のときも円高のときも長期・分散・積立を守る

私たち日本人は、株価指数だけではなく、為替相場も考える必要があります。

今現在、円安傾向が続いているので、米国株に投資している方の中には、為替差益が出ている人が多いと思います。これによって、2022年は年初来マイナス20%と絶不調だったS&P500に連動した投資信託を購入していた方も、為替差益のおかげで、打撃を緩和できているはずです。

半面、円安のときに米国株を買うのは高値づかみになります。

4つの要因から決定される為替相場も、政界情勢の影響を受ける株価も、誰も予想できません。

コロナショック、ウクライナショックを、誰が予想できたでしょうか。

株価が安く、円高の絶好のタイミングで投資し続けることは不可能です。

世界中がどんな状況になっても、リスク許容度の範囲内で、長期に、国内外にバランスよく分散投資をコツコツ積立を行えれば、大きく資産が減ることも無いでしょう。

S&P500連動の株価下落、32年ぶりの円安、アメリカの銀行倒産など、投資が影響を受けそうな不安材料はたくさんあります。

こんな時こそ、起こっている現象に狼狽せず、その理由を理解して、不安からの焦りで間違った行動をしないよう、知識武装して金融リテラシーを上げることが重要です。

ひとつひとつ学んでいきましょう。

ではでは―。